2014年5月15日木曜日

双極性障害再発予防のリチウムは一生継続??

実は、筆者は双極性障害の躁鬱の波を患ったことがあり、現在は寛解状態であるが、再発予防ということで、リチウムを服用している。これまでは、再発リスクが大きな病気であるために、ほぼ一生この薬と付き合っていかなければならないと言われていた。波に翻弄されていた頃のことを思えば、薬を飲むことなど大したことではないが、飲まなくてもいいなら飲まないに越したことはない。ただ、止めたいというと、自殺リスクが増えますなどといって飲みつづけることを説得され続けてきた。

ところが、最近読んだ『心の病の「流行」と精神科治療薬の真実』という本の中で リチウムの退薬研究の文献調査を行った例が紹介してある。
表紙は若干目を向くような装丁で、上に切り開かれた頭蓋の左にはlithiumと記されているので、リチウムは問題となる治療薬の中でも大きな位置を占めることが伺える。さて、この本の272ページにリチウムの退薬研究の論文の内容が参考文献付きで記されている。以下、そのまま以下に転記する。「1994年に退薬研究19件を分析した研究者らは、リチウムを中止した患者の53.5パーセントが再発したのに対し、リチウム継続患者の再発率は37.5パーセントであることを確認した。これは、リチウムが再発を防ぐ証拠とみなされたが、同じ研究者らによると、リチウムを徐々に中止した2,3の研究では、再発率は29パーセント(薬剤継続患者より低い数値)にとどまったという。(文献28)」(太字筆者)

文献28:J.Baker, "Outcomes of lithium discontinuation," Lithium 5 (1994): 187-92.

参考文献はオンラインでは読むことができなかったが、その一部分をBipolar Researchで見ることができる。それによれば、19の研究のうち2週間以上かけて退薬した78人の患者では23人しか、再発しなかったということである。

この事実はこれまで公に語られたことは無かった。双極性障害になってしまった以上、リチウムあるいは何らかの薬を再発防止薬として一生涯飲みつづけなければならないと、いわば常識として信じ込まされてきた筆者にとって、そうでは無いことをデータで示した論文が存在することは、少しショックであり、かつ、逆に一筋の光を見たような気がしたものである。

さっそく、次の診察時に主治医に、この本と、Bipolar Researchの該当部のコピーを持参してリチウム漸減法を試したいと申し出た。この本は始めて見る様子であったが、よくあるような偏った見方をした本では無いということをアマゾンの書評などで確認していただいた。論文は医学論文集のオンライン版には入っていないので、どこまで信用できるか分からないという立場であったが、とりあえず、少しずつ減らしてみることに合意していただいた。

今の「双極性障害」学会の常識に反する20年前の論文が無視されてきた理由は何かは、引き続き関係者や学会の重鎮の皆様にも意見を求め続けなければならないが、それはさておいて、自分はリチウム漸減法により、最終的に薬を飲まなくても再発しない状態を目指して一歩を踏み出したところである。今後の経過も追って報告したいと思う。

ちなみに、自分の双極性障害は、薬物誘起性双極性障害の分類に入る、アキスカルのいういわゆる双極III型と自己診断している。薬物による躁転から始まった双極性障害は最終的に薬を飲まない状態にもっていけるはずとの文章をkyupin氏のブログで読んだ記憶があったので、これも、リチウム漸減法でいけると自分で踏んでいる根拠となっている。今、kyupin氏のブログを読み返してみたが、どこに書いてあったか見つけられなかった。双極III型以外の人に同じアプローチが勧められるかはわからない。しかしながら、爆発的な流行をしつつある双極性障害に対して、薬無しの生活をゴールとすることができるということを、患者側からのアプローチで示していきたいと思っている。