2015年7月19日日曜日

双極性障害リチウム退薬その後の経過(2)--1年後

リチウムの服用を完全に中止してから、ちょうど1年経ち、前回の半年前の報告以来、まったくブログをアップデートしていなかったこともあるので、ここらで、再度、経過報告をしておきたい。

結論から言えば、まったく問題はおきていないということである。もちろん、いろいろな報告を探してみると、断薬後、8年経ってから初めて再発したという人もいるので、今後、一切再発しないということを言いきることはできないかもしれないが、1年というひとつの区切りを無事に迎えることができたのはうれしい限りである。一方、毎晩寝る前に薬を飲んでいた記憶は、遠い彼方に消えかかりそうで、ときどき残っているリーマス
2週間分の薬のパッケージを見ることで、現実であったことを再確認をしている。

すべての精神科医がリチウムの一生涯服用を支持しているわけではないことは、以前のブログにも書いているが、自分の場合は、最初にリチウムの退薬可能性を示唆してくれたのは、会社と契約している産業医の先生であった。会社の規程で、休職中は月に一回産業医の面談が必要であったので、主治医に次いで、直接的な診断を下せる立場にあったといえる。復職後の最後の確認の面談で、長期的にはリチウムを減らしていくという方向性を示唆されたので、主治医の意見とは異なっていたものの、ネットで検索してその方向性の妥当性を自分で調査しようというきっかけを作ってくれたのはありがたかった。特に産業医の場合には、継続的な患者をもちつづけることによる経済的な利益という要因が無いので、よりニュートラルな立場で患者の利益にかなったアドバイスができる可能性がある。一方で、産業医は直接の契約相手である会社側の意向に左右されやすい可能性もあるので別の意味で注意が必要であるが、自分の場合にはラッキーであったと言えよう。

いずれにしろ、精神科医の考え方も能力も千差万別なので、信頼できるルートでのセカンドオピニオンは非常に大切である。双極性障害と診断されるまえの、単極性鬱病の診断のもと、鬱病の薬がきかず、むしろ、悪化の様相を示していたときに、主治医からは電撃療法(ECT)を試してみることを提案されたのであるが、その話を産業医にすると、強く反対をされてどうしたものかと困ってしまった。結局、ECTはやらないことにしたのであるが、今となって考えてみると正解であったと言える。産業医の先生は、自分の症状に対してECTに反対したというよりは、ECTなどという非人間的な治療法に強く反対するというポリシーを持っていたようで、そういう精神科医も少なからずいるようである。ECTを妥当な視野に入れている精神科医も、自分自身が鬱になったときの治療法としてECTを希望するかという質問をしたら否という医師が多いのではないかと思っている。

双極性障害に関しても、自らバイポーラーであることを公言している精神科医はたくさんいるのであるが、彼らは果たして、再発防止のために一生涯薬を飲みつづけることを自ら実践しているのであろうか?有名なところでは、カリフォルニア大学サンディエゴ校のアキスカル教授であるが、彼が薬を飲んでいるという話はきいたことが無い。このことから考えてみても、一生涯薬を飲みつづけなければならないという話は眉唾もの、ないしは、特殊なケース、あるいは相当に商業的にバイアスのかかった考えた方が自然であろう。ここでも、医師が自分や自分の家族に対して選ぶ治療法が本来の最良の治療法であるという原則が成り立つと思われる。

2015年1月1日木曜日

双極性障害リチウム退薬その後の経過(1)

2015年、あけまして、おめでとうございます。

前のブログで、リチウム漸減法により、双極性障害再発予防としてのリチウムの摂取を減らし、最終的にゼロに持っていこうとしているという話を書いたので、その続きとして、今どうなったか書いておきたい。

2015年1月1日現在、リチウムを中止してすでに半年が経とうとしている。結果的には、少なくとも今のところは、何ら悪影響や再発の兆候は見られず、成功裏にリチウムを中止できているといってよいだろう。むしろ、昔のレベルの頭の回転を取り戻すことができたような気がする。これが、リチウムを止めたことと関連しているかどうかは分からないが、具体的には、特許となりうる発明を思いつき、発明申請書類を提出するといったところまで進んだ案件があるし、そうでないものでも、「風吹けば桶屋が儲かる」的な、長い論理の帰結として発生する問題の根本原因を特定する仮説を思いつき、問題解決にいたったケースもある。

これは、いい意味での「軽躁」状態と言えるのかもしれないが、「軽躁」と病的な「躁」の境界を本人が完全に自覚するのは難しいであろう。しかし、経験と読書により病気についての知識を得た今となっては、以前に比べて、はるかに、自分を第三者的な立場から客観視して「躁」に行ってしまっていないかを観察することがうまくなっている気がする。これは、病気に関する教育が最大かつ最高の治療であることを裏付ける一例となっているのではあるまいか。

自己チェックとして欠かせないことにひとつは、お金を使いすぎていないかということ。使いすぎイコール躁とはいえないので、衝動的な欲求によってポンとつかうことを止め、必ず、再考してみるという習慣をつければさほど怖くないことがわかった。もう一つは、とっさに怒りの感情が沸いてきたときに、この感情が、情動からくる反応的なものかを大脳皮質のほうで再考し、怒りを外に表すことによる得失の期待値が負であるときには、建設的な提案という形に変えて笑みを湛えながら進言するという技を身につけたので、怒るということ自体がなくなってしまった。まぁ、子供を叱るために怒ったふりをすることはありますが(笑)。

というわけで、リチウム断薬はいまのところは成功を収めているわけで、かつ、双極性障害の経験自体は、精神性を高める上でも、一歩高い見地から物事を見ることができるようになったというご利益があったような気がする。

自分の経験がすべての双極性障害を患った患者さんに当てはまるものでもないだろうが、少なくとも薬物誘起型の「えせ」双極性障害患者や、いわゆる双極性III型と呼ばれているタイプの患者さんには、結構参考になるのでは無いかという気がしている。

「まだ、半年ではないか、お前の自殺確率は確実に増えている(笑)」というしつこい方々のために、今後もときどき、報告をさせていただきたいと思います。

追記:
リチウム投与が脳の血流にどう影響を及ぼすかを直接的にfMRIで画像化して見ようという試みがアメリカで進んでいる。(参考サイト