2013年2月3日日曜日

医師の需要は伸びるか?

最近の高校生の医学部人気は、以前にもまして急上昇中とのことである。自分が高校生であった1980年代から、特に田舎の方では、理科系で優秀な生徒は医学部へいくという期待や、お決まりの「流れ」みたいなものがあったが、ここ数年の、国内有力製造業の凋落ぶりとそれに伴う、40代以降の社員へのリストラ報道などを見て、少なくとも食いっぱぐれの無い「医師」への志望は、特に高校生を子供に持つ親の世代の子供への期待として顕著らしい。

また、同じ研究者になるにしても、いざとなれば、医者に戻ればいいという安心感を持って、分子生物学の研究をするのと、公的なポジションを得ることができなけらば、食いっぱぐれるという不安感を抱きながら、素粒子物理学の研究をするのとでは、精神衛生に大きな違いでるのが予想されるので、「医師」の資格を持ちながら、研究者の道を進むのは「オイシイ」ような気がする。

先日、高校の同窓生との新年会があったのだが、学校柄、医師は多い。皆、不満を言えば切りは無いだろうが、それぞれ現職に満足しているように見えた。少なくとも、「負け組に入ってしまうリスクは無い」という感覚が、彼らの幸福感に寄与しているように思える。

さて、医師の繁栄はいつまで続くのだろうか?

自分の予想では、20年後をピークにグッときびしいものになるだろうというものである。これは、人口動態変化に基づく予測である。今、65歳くらいの団塊の世代が最期を迎える15~20年後に医療費がピークを迎え、その後、老人数の減少とともに、医療業界の淘汰が始まるという構図である。

病院は生き残りのために、アジアの富裕層の医療ツーリズム客を呼び込むために、技術、宣伝、接客に磨きをかけ、国際空港周辺に立地する病院は繁栄する余地を残すであろう。「神の手」を持つ外科医は、破格の待遇でひっぱりだことなるだろう。

さて、「最低でも食いっぱぐれは無い」はずの、低レベルの医師はどうなるのであろうか?公的病院の勤務医は、公務員であるから、公務員に当てはまるはずの身分保証が当てはまるのであろう。ただし、開業してやっていく自信の無い中高年医の巣窟と化すであろうから、だんだんと客足が遠のき、一部の中核病院を除いた公的病院は閉鎖せざるを得なくなるだろう。

というわけで、何が何でも医師、医師になれば食いっぱぐれはない、という神話は、あと20年で終わるというのが自分の未来予測である。

おそらく、僕の同級生の医師たちは安泰であろう。しかし、子供の世代の職業選択では、そういう観点での選択は、あまり意味の無いものになっているに違いない。

結論としては、需要の伸びに期待して子供に医師になるように導くのは間違いである。子供には、みずから世界観、価値観を持たせて、自分の能力の特性に合わせて職業を選択させ、かつ、時代の流れに合わせて柔軟に職業を変えていけるような能力をつけさせることが重要である。


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